はじめに

「Amazon広告にどのくらいの予算を割り当てればよいのでしょうか?」

これは、Amazon運用を始める事業者様から最もよくいただくご質問の一つです。適切な広告予算の設定は、Amazon事業の成功を左右する重要な要素でありながら、多くの事業者様が悩まれるポイントでもあります。

実際の調査によると、EC担当者の3人に1人が広告運用に苦労しているという結果も出ており、広告は商品登録や画像作成以上に難しい領域と言えるでしょう。

本記事では、Amazon公式パートナーとして数多くの企業様をサポートしてきた経験をもとに、効果的な広告予算設定の3つのアプローチをご紹介いたします。

Amazon広告予算設定の3つのパターン

広告予算の設定方法は、事業の状況や目標によって異なります。以下の3つのパターンから、貴社に最適なアプローチを選択してください。

パターン①:目標逆算型(売上重視アプローチ)

適用ケース

  • 明確な月次売上目標がある場合
  • 過去の広告実績データが蓄積されている場合

設定手順

  1. 月間目標売上 × 広告経由売上比率 = 広告経由売上目標
  2. 広告経由売上目標 ÷ 目標ROAS = 必要広告費
  3. 販売単価 ÷ 目標ROAS × CVR = 適正入札額

具体例

  • 販売単価:2,000円
  • 月間目標売上:100万円
  • 広告経由売上目標:80万円(80%)
  • 目標ROAS:4.0
  • 必要広告費:80万円 ÷ 4.0 = 20万円
  • CVR:5%の場合
  • 適正入札額:(2,000円 ÷ 4.0) × 0.05 = 25円

このアプローチの利点は、数値目標が明確なため、効果測定とPDCAサイクルを回しやすいことです。

パターン②:ポートフォリオ最適化型(商品別配分アプローチ)

適用ケース

  • 複数商品を同時運用している場合
  • 売れ筋商品と育成商品が混在している場合

設定手順

  1. 直近30日の販売実績を100%として基準設定
  2. 商品カテゴリー別にウェイト配分を決定
  • 売れ筋商品:70%
  • 育成商品:20%
  • 新商品:10%
  1. 全体広告費 × 各ウェイト = 商品別広告費
  2. 各商品の損益分岐ROASを基準に入札額を決定

メリット

  • 商品ごとの戦略的位置づけが明確になる
  • 効率性よりも効果を重視した運用が可能
  • 成長させたい商品への集中投資ができる

パターン③:段階的検証型(学習優先アプローチ)

適用ケース

  • 新規参入市場での運用開始時
  • 市場のクリック単価やCVR相場が不明な場合

設定手順

  1. 月額2〜3万円の少額予算でテスト配信を開始
  2. 実測データ(CPC、CVR、ROAS)を収集
  3. 取得データをもとに目標ROASと損益分岐ROASを再設定
  4. 本格運用に向けた予算と入札戦略を策定

重要ポイント
学習コストを最小限に抑えながら、市場の実態を把握することが目的です。結果が思わしくない場合は、広告運用の改善だけでなく、商品ページの最適化も並行して検討しましょう。

損益分岐ROASの重要性

どのパターンを選択する場合でも、「損益分岐ROAS」の算出は必須です。

損益分岐ROAS = 平均販売単価 ÷ 粗利益

計算例

  • 平均販売単価:3,000円
  • 原価(変動費込み):1,800円
  • 粗利益:1,200円
  • 損益分岐ROAS:3,000円 ÷ 1,200円 = 2.5

この場合、ROASが2.5を下回ると赤字、2.5以上で黒字となります。ただし、これは最低ラインのため、実際の目標ROASは損益分岐ROASより2〜3ポイント高く設定することをお勧めします(この例では4.5〜5.5)。

成功のための運用ポイント

1. 定期的なモニタリング

設定した予算と入札額は、週次・月次で効果を検証し、必要に応じて調整を行いましょう。

2. 季節性の考慮

プライムデーやブラックフライデーなどの大型セール期間は、通常とは異なる予算配分が必要です。

3. 競合分析の実施

市場環境の変化に応じて、競合他社の動向を定期的にチェックし、戦略を見直しましょう。

まとめ

効果的なAmazon広告運用は、「なんとなく」ではなく、数字に基づいた戦略的なアプローチが不可欠です。

本記事でご紹介した3つのパターンを参考に、貴社の事業フェーズと目標に最適な予算設定を行ってください。まずは損益分岐ROASを算出し、自社の収益ラインを明確にすることから始めましょう。

Amazon広告運用は複雑で専門性の高い分野です。
もし広告予算の設定や運用でお困りのことがございましたら、Amazon公式パートナーである私たちSales Doctorまでお気軽にご相談ください。

貴社の目標達成に向けて、最適な広告戦略をご提案させていただきます。

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著者プロフィール

齋藤 英一(さいとう ひでかず)
株式会社ウェルボン 東京支社長
Amazon運用支援事業 統括責任者

  • 2009年 株式会社ウェルボン入社
  • 2018年 Amazon運用支援サービス「Salesdoctor」を開始
  • 2024年 Amazonふるさと納税中間事業者サービスを開始
  • 支援実績 延べ 250社以上 の出品事業者・年間 25,000 ASIN を運用
  • サービス範囲 広告最適化/商品ページ改善/物流支援まで ワンストップ で提供
  • 登壇歴 アマゾンジャパン共催セミナー 32回(2025年1月時点)
  • 教育事業 Amazon出品者向け教育プログラムを企画・運営

「Amazon運用に悩むすべての方をサポートする」をモットーに日々活動してます。